テーマ : 思考実験
日時 : 2025年2月25日 19:30 – 21:00
会場 : 妙行寺門徒会館
昨年2月以来となる「思考実験」をテーマに、副住職にお願いいただきました。今回は「ポール・ワイスの思考実験」「ザ・ヴァイオリニスト」という、2つの思考実験を行いました。
① ポール・ワイス (生物学者) の思考実験
ピヨピヨと鳴いている1羽のヒヨコ。このヒヨコを試験管の中で粉砕しました。粉砕の前後で何が変わるのでしょうか。
参加者の皆さまからは「ヒヨコの未来が失われる。あったはずの世界が失われた」「ヒヨコは見た目の可愛さも影響するのでは?」「(違う生物に生まれ変わるのであれば) 罪悪感は薄らぐ」「生物は呼吸をする」「粉砕された状態を生きた状態とは言えない」「心臓が機能しない状態であれば生物なのか?」ほか、数多くのご意見をいただきました。
ポール・ワイス氏の解釈は「ホモジナイズにより失われたものは生物学的組織と定義。また、生物学的組織が失われたことにより生物学的機能も失われていることから、この両者は生物において不可分であることが明示されている」とのこと。粉砕の前後において、試験管の中に存在する「ヒヨコの存在」は同じ。とても残酷な思考実験ですが「何が失われるのか」「生命とはなにか」「動物への尊重」といった対話も尽きないですね。
② ザ・ヴァイオリニスト
ある朝目を覚ますと、あなたは病院のベッドに横たわっています。隣のベッドには有名なヴァイオリニストが眠っていました。ヴァイオリニストとあなたは、輸血用の管で繋がれています。ヴァイオリニストは病気にかかっており、ある条件を満たす特別な血液を「9ヶ月間輸血し続けなければ」死んでしまいます。
偶然にも、あなたは特別な条件を満たす血液型。あなたの存在を知ったヴァイオリニストのファンはあなたを誘拐し、輸血を行っていたのでした。あなたが輸血を止めた場合、ヴァイオリニストはその場で死んでしまいます。
あなたは輸血を続ける義務があるでしょうか。法的義務はありません。参加者の皆さまからは「私の9ヶ月間はどのようになるの?」「運命であればヴァイオリニストは死ぬ」「協力の義務はないが話を聞いてみたい」「有名なヴァイオリニストという理由だけでは協力できない」「私にも自己決定権が必要.. 誘拐された時点で自己決定権がない」「自分の意思で人を殺めるか否かに引っかかる」「人を殺める事実は罪悪感として一生残る」ほか、数多くのご意見をいただきました。
この状況は望まない妊娠 = 妊娠中絶と置き換えることができます。哲学者 ジューディス・ジャーヴィス・トムソンが提唱。私 = 妊婦。バイオリニスト= 胎児。トムソン氏の解釈は「同意しなければならない義務はない」とのこと。参考までに、2021年度における日本の人工妊娠中絶件数は126,174件とされています。今回の思考実験もあっという間でしたね。皆様ありがとうございました。次回の哲学カフェは、4月29日(火祝)に開催させていただきます。
– 次回の開催について
4月29日(火祝)に妙行寺門徒会館にて。参加予約は「4月1日19時30分」より、ホームページで受付開始いたします。はじめての方もお気軽にお越しください。ご参加をお待ちしております。